イチロー選手は本当に衰えたのか。「年齢」が生む世間の空気。
◆イチロー選手の心身に関するデータに特化した骨のある記事が読みたい
イチロー選手のシアトル・マリナーズへの入団、そして、特別補佐への就任と、サプライズなニュースが飛び交っていますね。
さまざま人が、イチロー選手の進退について語っていますが、私がずっとモヤモヤしているというか、知りたいなと思うのは、タイトルのとおり、イチロー選手は本当に衰えたのか、ということです。
イチロー選手の戦績を眺めていると、確かに盗塁数や打率が落ちているのですが、チームの中での立場や役割が変わっていることもあり、これらの数値から何が言えるのかよくわからないところがあります。動体視力の低下なども聞いたことがありますが、その指標は何なのか、いまいちピンとこないというのが素人なりの気持ちです。
特に知りたいのは、
- どういう点が技術的に落ちてきているのか。それがわかる客観的なデータは何か
- 現在の技術がメジャーの基準でいえば、何がどこまで満たしていて、何が満たしていない状態なのか
- 世間の「年齢的に…」という空気が及ぼす心理的な影響はないか
という点です。
ずっとイチロー選手を追い続けてきたジャーナリストや専門家に、読み応えのある記事をぜひ書いてほしいと思います。
「年齢から言えば…」や「年齢的に…」というのは、技能が落ちているという事実があって、その要因を推測するときに出てくる言葉であって、年齢だけを強調されても、腹落ちしにくいのが実際のところです。
◆「もう歳だから」という言葉
「もう歳だから」という言説は、巷でよく聞きますが、これは肉体的な衰えもあるものの、どちらかというとそれ以上に精神的な衰えからきているものでないかなと思う時があります。
「私はもう歳だから、若い辻さんに頑張ってもらって…」
職場では、頑張る=パフォーマンスを発揮するという文脈で語られることが多い。
しかし、周りを見渡すと、私以外、ほとんど若い人はいない。
職場における若い人=がんばる=パフォーマンスを出す
頑張る人:N=1
職場における若くない人=がんばらない=パフォーマンスを出さない
頑張らない人:N=50
どーするねん!これ。
若い人が1人のみとまではいかないものの、こういう年齢構成の職場、増えていないですかね。
「若い辻さんには頑張ってもらって」という発言は、「俺、もう疲れたから、真剣に仕事しないよ」と宣言しているように聞こえます。
本当に若手の活躍を願うシニアは、こういう発言はしない気がします。さりげなくサポートしながら、活躍の場を与えてくれる。
高齢化が進んでいます。定年制の廃止も議論されるようになってきました。モチベーションが下がったシニア社員をどのようにマネジメントしていくかという研究も、注目されています。
人生100年時代といわれる時代のなかで、これまで年齢に抱いていた固定観念は、変えていかねばならないのかもしれません。
50歳までマネジャーやってから、プレイヤーに戻ったとして、肉体的に衰えがあったとしても、圧倒的な知識量と熟練の技を発揮して、プレイヤーの中でのエースになってもいいんじゃないかと思います。若手とは異なる活躍の仕方があるのではないかと。
輝くシニアがいれば、きっと若い人のロールモデルになるはず。
輝くシニアがたくさんいれば、若い人は目指すべきキャリアを描けると思います。
一方で、輝くシニアがいなければ、若い人は会社にいる将来を見失うかもしれません。
◆イチロー選手のこれからがヒントになる
「失敗した時でも、成功した時でも、サヨナラホームラン打った時でも、三振した時でも、何があってもコンスタントにやり続けているイチローさんがいるからこそ4000本という数字があるんじゃないかなっていうふうに思いました」
イチロー選手が4000本安打を達成した時、ニューヨークヤンキースのチームスタッフ、アレン・ターナーさんが、特集番組で述べた言葉です。
僕はこの言葉に感銘を受け、一流の努力というのはそういうことなんだと痛感しました。
今回の特別補佐就任時、イチロー選手はインタビューでこう述べました。
「僕は野球の、何て言ったら…研究者でいたいというか。自分が今44歳でアスリートとして、この先どうなっていくのかというのを見てみたい」
イチロー選手がこれから見つけていく答えは、アスリートだけでなく、同世代の多くの人々にとって、働く上でのヒントになるのかもしれません。
来年、ガンガンに先発出場するイチロー選手が見られることを、僕は心から願っています。
それでは、お元気で。