新刊「データから考える 教師の働き方入門」を出版!この本に込めた思い
みなさん、こんにちは。辻和洋です。
この度、『データから考える 教師の働き方入門』を出版することとなりました!
2月28日には全国の書店に並ぶ予定ですが、楽天ブックスやamazonでは既に予約が開始されています。
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毎日新聞出版さんにお声がけいただいてから、足かけ1年。長い執筆の旅でした。
監修者であり、指導教官でもある中原淳先生にアドバイスをいただきながら、もう一人の編著者である立教大学助教の町支大祐さん(写真で赤く囲んだ方。元中学校教師)と毎週ミーティングを重ね、データの分析と執筆方針の議論を繰り返して来ました。
本書は横浜市教育委員会と中原淳研究室の共同研究「教員の働き方や意識に関する質問紙調査」によるデータを元にしています。共同研究プロジェクトチームの皆さんをはじめ、たくさんの方々の支えがあって、出版までの道のりを走り切ることができました。どうもありがとうございました!
ここでは、本書の内容とそこに込めた思いをご紹介させていただきます。
◼️データが盛りだくさんの1冊
本書は、序章と1〜5章で構成されています。
序章 「忙しい先生」たちの毎日
第1章 なぜ今働き方を考えるのか
第2章 数字で描く教員のリアル
第3章 データから考える働き方改善
第4章 働き方を見直すアイデアとポイント
第5章 対談〜現場から見た教員の働き方〜
本書の売りはデータです。小中学校の先生たち約500名に回答していただいた調査データを元に、働き方の実態とその裏に潜む意識や職場の状況を分析しています。
一部の専門家が読み解くような難しい分析はほとんどなく、誰が見てもぱっとみて実態がわかるよう、グラフなどを作成しています。
学校現場で何となく感じていたこと、あまり言葉に出せなかったことなども含めて、先生個人や職場の状況を数値として表わしています。ここまで様々な職場の状況をデータとともに解説している書籍はおそらくないだろうと思います。
・働き方を改善したいけど、どうしていいかわからない先生
・働き方改革についてモヤモヤしている先生
・教師を目指していて、働き方を考えたい方
・先生の働き方について知りたい方
に読んでいただけるよう、構成しております。
これらのデータを元に、職場での働き方について振り返り、議論していただければと思っています。
◼️本書のデータ(一例)
分析からは「教師」という職業ならではの結果がたくさん出てきました。本書では、それらをタイプ分けし、体系化しています。ここでは分析結果の一例を紹介します。
例えば、下記の図は「時間外業務」、いわゆる一般企業で言う「残業」に対する意識です。学校の先生は、時間外業務の削減をするのに、実は罪悪感やためらいを感じている人が全体で36.6%いるということがわかりました。
つまり、3人1人は、遅くまで働いていないと、子どもたちや保護者に「申し訳ないな」という罪悪感を抱えてしまうのです。
さらに、この罪悪感について、在校時間の長い先生(高群)、中程度の先生(中群)、比較的短い先生(低群)の3グループに分けて分析してみました。
すると、長く働いている先生のグループほど、罪悪感を抱いている割合が高まっていくということがわかりました。
こうした先生の潜在的な罪悪感の意識が、長時間労働に結びついている可能性があるといえます。
それは、子どもたちにできるだけ時間をかけて教育をしたいという熱意とも読み取れます。 働き方の改善を進めていく上では、このような先生の意識を理解していかなければ、本質的な解決は難しいのではと思います。
本書では、先生の全体的な働き方の傾向や、長時間労働の先生や職場の特徴を描いているほか、働き方の改善に向けての考え方も提示しています。さまざまな観点からデータを抽出し、解説しているのが特徴です。
◼️ストーリーも編む
本書は、データばかりをひたすらに羅列した本ではありません。データは全体的な傾向をつかんだり、客観的な数字に基づいて考えたりするには、とても役立ちます。
一方で、現場の所作は細部に宿ります。データではすくいきれない先生方の細やかな行動や思いも見ていく必要があると考えました。そこで大切にしてきたのが観察とインタビューです。
現場を知ろうと言うことで、朝7時に学校へ訪問し、夜8時頃まで1日中、先生の働き方を観察させてもらったこともありました。
また、教育委員会の方々と中原先生と町支さんでさまざまな学校へ訪問させてもらい、一人につき10〜30分、先生たちの思いを聞かせてもらいました。おそらく計50人くらいにはなったかと思います。
忙しい合間を縫って実情を話してくださった先生には心より感謝申し上げます。本書では、データとともにこうしたインタビューの声を随所に記させていただいています。
また、序章では、先生の働く様子を描いたストーリーを載せています。こうした先生の日常を、自分と重ね合わせ、自己の働き方を振り返ってもらえればと思います。
◼️聞きたいことが語られている「対談」
最終章では、学校現場で積極的に働き方について考え、発信をされている先生と中原先生の対談を記しています。
中原先生とご対談いただいた先生は、
岩瀬直樹先生(一般財団法人 「軽井沢風越学園設立準備財団」副理事長 )
杉本直樹先生(大阪市立上町中学校国語科教諭)
住田昌治先生(横浜市立日枝小学校校長)
です。
日々の働き方、部活動のこと、管理職としての振る舞い・・・。現場で日々試行錯誤されている先生方の語りは、まさに「痒いところに手が届く内容」です。今一番聞きたいテーマをお話いただいています。
また、特別対談として、横浜市教育委員会の課長お二人に教育行政の視点から働き方改革について語っていただきました。行政サイドの率直なお話もとても貴重なのではと思います。
本書では、ほかにも働き方改善のアイデア実践事例集なども掲載しています。ストーリー、データ、アイデア、対談と、質量ともにあますことなく働き方にまつわる知見を、1冊に詰め込んでいます。
◼️実態なき改革にはしたくない
思い返せば、私たちは机の上でひたすら数値を追って来たというよりは、現場と研究室を往復するという日々でした。データを分析し、学校へ出向いて先生と一緒に考える。そして、また分析して・・・の繰り返しでした。
そこには、現場の先生方が置き去りになるような、実態なき改革には、決してしたくないというプロジェクトチームの思いがあります。
研修やワークショップという形で調査結果を現場へお返ししてきましたが、時間に限りがあるなかで、全てを体系的にお伝えするのはなかなか難しいということがありました。
そのなかで、多くの人々とともに先生たちの働き方について考えたいと思い、書籍化に至りました。
私は1年かけて100項目以上のデータを分析して来ましたが、データは単なる数字ではありませんでした。先生たちの子どもへの思いが詰まったメッセージでした。コツコツと結果を集計し、分析を進める中で、目頭が熱くなることが何度もありました。
先生たちの先には、子どもたちがいます。子どもたちはこれからの日本を担います。
先生の働き方を考えることは、これからの日本を考えることにもつながる。そう思って、私はこのプロジェクトに取り組んでいます。
もし、ご興味のある方がおられましたら、この本を手に取っていただければ嬉しいです。
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それでは、お元気で。
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※このプロジェクトには、これまで多くの皆さんが関わってくださっています。横浜市教育委員会・教職員育成課の立田順一さん、柳澤尚利さん、外山英理さん、松原雅俊さん、根本勝弘さん、飯島靖敬さん、野口久美子さん。大学は、中原淳先生をはじめ、町支大祐さん、飯村春薫さん、いつも本当にありがとうございます!
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