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人材育成の観点から「経営」「教育」「メディア」について考えます。

質の高い情報を効率よく引き出す方法は「ラリーの緩急」!?

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◆取材先との言葉のラリー

最近は、マスコミに内定している学生さんと一緒に取材することがあります。そこで面白いのは、自分の技能が映し鏡になって見えるということです。

 

僕が社会人になってから培った技能が、彼らとの比較によって浮かび上がってきます。学生さんたちができないと言いたいのではなく(むしろ私の方が学生時代はもっとできなかった汗)、新人から熟達していくまでに、育成の視点から何を培うべきかが見えてくるという意味で大変貴重な経験をさせてもらっています。

 

取材を終えると、だいたいメシに連れて行って、振り返り会をするのですが、ここで私がやっていること、意識していることを言語化して伝えます。

 

最近気づいたことは、取材先との言葉のラリーについてです。

 

◆取材の実践方法

多くの学生は、取材をしている相手と、ずっと一定のペースで言葉のラリーをします。一問一答のような形式です。相手が打ち返してこなくても、そのボールを待つか、打ち返しがあるまで、言葉を送り続けます。

 

構造化インタビューなど、客観性が求められるものであると、そういう手法はありかもしれません。しかし、質の高い情報を取るには、大変効率が悪いです。

 

私は、まずいろいろな角度でさまざまな言葉を投げていきます。相手からどんな打ち返しがあるか、様子を見る段階です。

 

当然、打ち返しが悪い箇所があったり、逆にものすごく速く返ってくる箇所があったりします。それを頭で記憶しておいて、「大体、この人の打ち返しのいいところはここだな」と把握した瞬間、一気にペースを上げます。「高速ラリー」段階に入ります。

 

言葉を変えながら、何度も何度も同じ内容の趣旨の質問をして、深掘っていきます。当然相手も自分のツボを突かれているもんだから、饒舌になるし、ジャラジャラいい情報が出てきます。ここは貪欲に聞ききることが重要です。すると、取材されている本人すらも気づいていないその人の核となる言葉が出てくることもあります。

 

そして、「聞けたな」と思ったら、さっと終わる。

 

ここでさっと切り上げられるのは、最初にいろいろな角度で様子見をしているからです。最初の段階で5W1Hなど、最低限必要なことを聞けているのです。

 

そして取材を終える頃には大体頭の中で原稿ができている。核となる言葉が聞けていれば、見出しも想像できる。新聞記者は、そのスキルを持っているから書くのが速い。

 

ちなみに、打ち返しが悪い箇所を何度当ててもいい情報は出てきません。なぜなら、その質問について相手は情報を持っていないからです。

 

相手が情報を隠していると考えられる場合は別です。それはまた他のテクニックが必要なので、別の機会に。

 

 ◆記者は速く書くのに長けている

先日、ベトナム戦争の機密文書をスクープした「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」という映画を観にいきました。

 

ワシントンポスト紙の編集主幹、ベン・ブラッドリー氏が、大量の資料を前にたじろぐ記者たちに数時間で記事を書けと命令します。「ニューヨークタイムズは数ヶ月かけたのですが……」と記者が言うと、ベンはこう返しました。

 

 

「君は小説家か?記者か?」

 

 

いかに時間内で質の高い記事を書くか。新聞記者にはそれが問われています。記者は多忙であることが常なので、取材をいくつも掛け持ちしています。そういう環境下だからこそ、自然と培える力なのかもしれません。

 

ゆっくり時間をかけて取材をすることが重要なものもあります。効率的に情報を引き出すことが全てだとは思いませんが、人から話を聞くときに、「相手の話の核となりそうなものは何か」。それを考えながら、言葉のラリーに緩急をつけてみると、少し変わって見えるものもあるかもしれません。

 

それではお元気で。

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